今夜の入浴

夫はお風呂が好きである。特に認知症が進んでから、ほどよい湯につかってしばしぼんやりするのは至福の時間のようである。ディサービスに行くと、施設でお風呂に入れてもらえるし、毎朝シャワーも浴びるから、私としては夜は清拭だけでいいのではないかと思わなくもないのだが、猛暑のことで汗もかくし、あんなにお風呂が好きなのだからと、毎晩休む前に入浴をするのである。
ところがここしばらく前から問題が生じてきた。湯船から立ち上がれなくなることが多々起きるのだ。どうやって立ったらいいかわからないのだ。一度、湯船の中で正座をして、身体を前に傾けると、自然に膝をつく形になり、そこから立ち上がるといいのだが、それが出来なくなってしまったのである。それでも、私が洗い場で、必死で実演をして見せ、それを真似てうまく立てる日もあるし、何事もなくひょいと立てる日もある。それで入浴のたびに、(今日は大丈夫かな・・・、立てますように・・・。)とひそかに案じるのである。
さて、今夜の入浴。かってなく最悪の日となった。どうしても自分で立とうとせず、全身を脱力状態にしている80キロ近い身体を、湯船から出すのはそう簡単ではない。満身の力をこめてやっとの思いで立たせたと思ったら、ずるるるうっドッボンとまた湯船に座り込んだときには眩暈がしそうであった。(にくたらしくて!)
苦闘50分。ついに湯船の外に出すことができた。夫が就床して居間で落ち着いた時、テレビが選挙関係の特集のようなものを放送していたが、もおっ、世の中がどうなろうとどうでもいい! という気分である。今夜こそ、更新しておきたいものや、何通かの手紙などを書かねばと思っていたけど、頭が働かない。とにかく疲れました。今日も。