密やかな連続殺人

今回のシリーズの中で最も面白く観た。殺された女性の片耳のピアスがなくなっていることから、仄暗い独自の”夢想”を形に成そうとした殺人と、我らが右京さんは推理し、やがてかって殺人事件の容疑者とされたことのある、元売れっ子の塾の講師を犯人とにらむ。がこの講師は死ぬ。ここで来週につづくである。残された死んだ塾の講師の妻、美しき精神科医、清らかな目をしたその助手・・・来週はこの人たちがなお面白く魅せてくれそうな予感がして楽しみである。
それにしても、ちょうど母親を毒殺しようとした少女の事件が世を騒がせていて、このドラマの、エキセントリックな人物たちの”嗜好性”と重なる気がして妙に鬼気迫ってきた。

ドラマとは離れるが、さっき観たニュースで、あの少女のこれまでの日常を取材し、ブログが読み上げられていた。学校の他の生徒を太陽の下でくったくなく咲き誇るひまわりに例えるなら、事件の少女は仄暗い裏庭の隅にひそむ苔のような像が浮かび上がる。そしてキャスターは、またしても『心の闇』と称していた。
ニュースの情報から表層的に見て、この少女が誰よりも孤独であったのだろうことは想像がつくが、何かがおこると、『闇』として、それに相応しい情報を収集し、わかったつもりになることは、それこそ、”闇”を作ることになるのだ、ということを心しておきたい。

ドラマに戻る。今週のラストに、屋上から身を投げた”犯人”が言う。「こっち側に生きているものの苦しみは誰にもわからない。」(註:セリフは違います。そのままのセリフ、忘れました。)
私は実は、今、『こっち側でしか生きれないあなた』へ向けて物語を書いている。・・・私の作品はロマンチックで明るいですけどね。でも、ちょっと感性的に近いというか、死んだ男のセリフがよくわかる気がした。

そうよ、いろいろあるのよ。こっち側でしか生きられないものを、”闇”で片付けちゃいかんよ。ますます世の中薄っぺらになって、マジでヤバイ実感。ナアンチャッテ。