柳生十兵衛七番勝負 島原の乱『誠の剣』

冒頭の殺陣の鋭さ、美しさ。柳生十兵衛村上弘明)の今回の相手は、伊予松山の蒲生一族の浪人、小林東十郎(勝野洋)。・・・この二人の死闘には胸が震えた。それにしても『柳生十兵衛七番勝負』は毎回殺陣が凄い。殺陣だけでも見ごたえがあって、先週は時間がとれず観れなかったのだがそれが残念でならないほどだ。


浪人たちは島原に急いでいる。前に立ちはだかる十兵衛。浪人たちは十兵衛に刀を抜こうとするが、小林東十郎は制し、十兵衛に土下座して頼む。「武士として華々しき死に場所を見つけた。」「ご公儀と戦って生きて戻れるとは思っていない。」「我らは戦さ場に行かせてくれ。」切々たる真実の言葉。黙したままその言葉をのみこむ十兵衛。感謝の思いをこめて頭を下げ、十兵衛の横をすり抜けていく浪人たち。
東十郎は、「武士の情けで我らを通して下さった十兵衛どのに、土産を差し上げないわけにはいかない。」と十兵衛に向いて刀を抜く。
鋭くも悲しい、二人の剣士の闘い。どおっと荒れた泥沼のような田に仰向けに倒れる東十郎。
東十郎を悼み、わが運命を悼み、獣のように咆哮する十兵衛。


島原の乱は、幕府老中の恐ろしい陰謀によって仕組まれたものであった。
十兵衛の父、柳生但馬の守(夏八木勲)の失脚を図る酒井阿波の守(布施明)たちの陰謀である。・・・布施明がこんな演技派であったとは知らなかった。霧の摩周湖のイメージを払拭。
その陰謀とは、寛永14年2月12日、島原の乱の起こる日、幕府の手ではどうにも鎮まらない状況の中、朝廷の円城寺(杉本哲太)が、上皇院宣を持って現れ、その院宣によって、乱が治まる、という筋書きのものである。
これによって幕府の権威は地に堕ち、朝廷が権力を持つ、というのである。・・・杉本哲太熱演!
但馬の守は、島原の乱を煽り、キリシタンと浪人たちを島原に集め、一網打尽にして成敗する計算であったが、朝廷に通じている老中の企みは、それを上回っているのである。


全てを荒木又衛門(高島政宏)から聞いて知った十兵衛は、「父よりも、罪のない百姓、浪人たちを救いたい。」と切望する。十兵衛は、浪人たちが武士らしく生きたいと願いながらも圧制の世に浪々の身となり、その失意の深さに苦悩していることに共感の思いを持っている。百姓もまた純粋に人間として生きようとしていながら、政治の犠牲になり、田畑を棄てざるを得なくなっていることを、十兵衛は痛みとともに理解しているのだ。天草四郎を中心にしたキリシタンたちもまた己の神を信じているだけだと洞察していた。
その人たちを、何としても救うべく、十兵衛は奔走する。
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