波紋

今日のドラマは、終盤の重要人物のセリフ、「お金にむらがる人を、高みからみてみたいと思った。」をテーマに、自室のポストに六百万円が投げ込まれた、と交番に若者が現れるところからはじまる。若者は、「お金は俺のお金を盗んだ奴が、お前のポストに投げ込んだんだ、返せ!」とやくざ風の男に襲われる。そして、この後に、そのやくざ風の男が自室で殺される。ここで、殺された男の隣室の男、交番の巡査、交番で巡査と世間話をしている高齢の女性がそろう。また若者が心理学を学んでいる学生とわかる。この駒と設定がそろったところで、観ている人にも、だいたいの筋と犯人がわかる。それだけシンプルな演出であった。だけど、『お金にむらがる人を、高みからみてみたいと思った。』という抽象的なテーマを芯にしているのが成功して、なかなか面白かった。このテーマを表す学生にもう少しシニカルさが漂うとなおよかった気がするが、現代を表すにはくせのない感じのこの人でよかったのかもしれない。

それにしても、『お金にむらがる人を、高みからみてみたいと思った。』を”罪”と言い切る人間観の深さがこのシリーズの要なんだな。この”罪”はお金がからまなくても日々誰でもが犯している。殆どが無意識に。この罪を犯すことで人間は自分を支えているとさえ言える気がする。私なども、次々私に猫や犬を押し付けてくる人によって苦しんでいるが、結局この意識の上で、自分の誇りを支えている。つくづく傲慢だと思うよ。