けものみち『愛人の道』

夫が就床して、居間で一息つこうとテレビをつけたら、このドラマをやっていた。これまで観ていなかったし、オリンピック関係の放送を探そうと、チャンネルを替えるつもりだったが、緊迫感が漂っているのに惹かれてそのまま観た。
松本清張の作品は殆ど読んでいるつもりだったのに、この『けものみち』はどうしても思い出せない。人物を原作から思い描きたいと思ったがわからないので、そのままドラマに見入る。米倉涼子平幹二朗さん、佐藤浩市さん、仲村トオルさん、若村麻由美さん、吹越満さんたちが扮するどの人間も、刃物になったような人生を生きているらしく、人と人が常に対立的な向かい合いをしていて、終わった時には誰かに引きずりまわされたかのような疲れにおちていた。
特に印象に強かったのは若村麻由美さん。この人は清純とか聡明というイメージだったので、「いつの間にかこんな”洞窟に咲く大輪の紅い花”のような役をされるようになっていたのだ。」と驚きがあった。嫉妬とプライドの怨念の表現が浅い気はした。彼女の役は、胸の底にとめどない哀しみがあるはずだと思えるのだが、その哀しみが見えなかったのだ。
米倉涼子さんは、何を演じても突き抜けていて気持ちがいい。