妻の覚悟

今夜は、長期の戦線に出る夫の留守を預かる妻の苦悩と、それに立ち向かう姿が中心になっている。
山内一豊は、京都を目指す織田信長についていく秀吉の片腕として出かける。途中、信長は、妹市が嫁いで行った浅井長政小谷城に少数で立ち寄る。長政は信長に傾倒していくが、父親はここで信長を殺そうと考える。長政は、父に、「信長様を殺すなら、私を殺し、屍を踏みつけて行ってくれ。」と凛と抵抗する。

こういう時の演技をさせたら榎木正孝さんは重厚で迫力があってドキドキしちゃいますね。市との愛情も通い合っているだけに、どこか艶もにじんでなかなかのものです。大地真央さんの市も気品溢れた美しさで、近い将来、この二人に悲劇が襲うことを知っている観客としては切ないものがあります。
小谷城での一夜の緊迫感は、さり気ないが、香川照之さんと上川隆也さんだけで醸してさすがです。上川隆也さんの一豊は、力をまだまだためこんでいるところで、今後の経緯が楽しみです。

さて、留守の家を守る千代(仲間由紀恵)と新右衛門の妻船(熊谷真美)は、戦いが終わって帰ってくる夫や、子供たちや、家臣のために、野菜作りや洗濯など、汗いっぱいで働く毎日である。千代は、身重もの新右衛門の船に、「無理をしないように。」と気遣うが、船は、「八人目の子供だからもうよくわかっているので大丈夫。」と笑う。
ところが、船は連日の無理がたたって流産し、死んでしまう。「母ちゃんを返せ!」新右衛門とふみの二男、徳次郎は千代に怒りをぶつける。
傷心の千代のところに、一豊たちは帰ってくる。千代は、新右衛門に、「私が至らなくて、船を死なせてしまった。」と詫びるのである。
その夜、徳次郎が姿を消す。雨が降る真っ暗な洞窟に一人入って徳次郎を捜す千代。それを見守る一豊。千代は熱で倒れている徳次郎を見つけ、母のように抱きしめるのだ。ここの仲間由紀恵は、聖母のような慈愛をふくんで本当に綺麗だった。
やがて徳次郎は気がつき、この時はもう全てを受け入れ、前に進もうとしている。

この回は、こうした人間模様の土台をみせているのだろう。船の死の場面、洞窟で徳次郎を抱きしめる千代の場面など、感動をしているうちに、山内家の人間たちがよくわかってくる。洗練された演出だと思った。
ドラマの前半に、後の細川ガラシャ明智光秀の娘が登場する。繊細な綺麗な顔立ちの少女である。