NHK慶次郎縁側日記『うつせみ』

8時過ぎて、そろそろ就床の支度をと思って夫の部屋に行ったら、夫がこのドラマを観ていた。
途中から観て、しかも原作も読んでないので、筋も人間模様も何もわからなかったが、今の言葉で言えば透視や未来予知の能力を持った娘にお告げをさせ、お金をもらっている元侍の男の虚無を描いているようだった。
この男は、もともとは普通の侍として妻と娘と暮らしていたようだが、何か深い事情が起きて人生が転落し、妻は悲惨な死に方をし、そして今、娘にお告げをさせていて、人々は、娘のお告げを告げる男の言葉を無条件に信じているらしい。
このうさんくさい男を、津田寛治が演じていた。
津田寛治は、CMやドラマの脇役でよく見かける役者さんだ。細面で繊細さと陰影を感じる風貌の人で、役によったら映える人だろうなと思っていたが、このうつせみの役は胸を打った。
かたせ梨乃とのからみで、「人間などほろびよ!」と内面の慟哭のような激しさを表した場面では思わず涙してしまった。ラストの、月明かりにせみのにぬけがらをかざしている場面の哀しいけれど清しいまなざしと、その直後の死は、まさに透き通ったせみのぬけがらのようで綺麗だった。