犯人はスズキ

今回のドラマ、質のいい短編小説を読んだような後味である。
ある地域で、その地域の男性が撲殺されいるのを、やはり同じ地域のジョギング中の夫婦が見つけ大騒ぎになる。ちょうどその場に居合わせ花の里のたまきさん(郄樹沙耶)もびっくりして杉下右京(水谷豊)に電話をかける。
いつものメンバー(伊丹さんたち)が現場にかけつけ、操作を始める。
被害者は白石?白坂?(スミマセン、忘れました)さんで、前の晩、やっぱり地域の住人のスズキさんと喧嘩をしていたことがわかる。
右京さんも、別のルートで、スズキさんの存在を把握する。


殺された白坂?さんも、犯人と目されるスズキさんも、この二人の喧嘩を目撃した人も、被害者の第一発見者もみんな同じ地域の自治会のメンバーであるのだ。
そしてこの地域は、子供たちに防犯ブザーを持たせて、知らない人に声をかけられたらすぐにブザーを鳴らすようにとしつけられている。
実際、捜査のために、公園で遊んでいた子供に声をかけた薫ちゃん(寺脇康文)は、駆けつけたおまわりさん(斉藤?)に咎められた。とにかく、地域自治体が一団となって子供を守っているのだ。


だが、一点の矛盾から、右京さんは、自治会の人たちに疑惑を抱く。
この矛盾は私も気がつきました。ここから、善良な自治会の人々におや?と思い始めました。
でも、こうした推察ができても、このドラマが甘いとは思わなかった。
筋の流れが見えても、質実な質の高さは崩れない。これは、自治会の人々の演技が一様に自然で地域にとけこんだ存在を表していたからだと思う。
右京さんのセリフにあった通り、”残酷で悲しい真実”が明らかになり、自治会の人たちへの共感すら感じたのも、俳優たちの演技がよかったからであったろうとも思う。


過去におこった可愛い心根の優しい少女が殺された事件が根元になる殺人事件だったわけだが、この少女を悼む大人たちの想いを吐露した場面など、描き方によったら、現代の世情へのテーゼの色が濃くなりすぎて、高みからの説教のようになることもあるが、このドラマはそうした感じがなく、むしろ、大人たちの嘆きが、虐待や殺しの対象になっている現代の子供たちへの、祈りのような切なさが漂い、そこに共感の気持ちがおこるのだ。


犯人スズキは?・・・お見落としの方はぜひ再放送でご覧下さい。