炎の中の抱擁

夫は脳梗塞の後遺症で認知症になるまで読書家であった。家にいる時は殆ど本を読んでいた。小説も結構読んでいたようだ。外国の作品が多いようだったが、日本の時代物の作品も好きだったようで、宮本武蔵織田信長など長編物の文庫本がそろっていた。
司馬遼太郎の作品は特に好きだったのだと思う。かなりそろっていた。余談だけど、司馬遼太郎さんは、夫の郷里でもあり私の実母の生家のある愛媛県宇和島によく逗留されていたそうである。宿泊は”Hや”という市の山の手にある老舗の宿屋と決まっていたらしい。夫の実家も山の手にあって、夫の母は、司馬遼を何度も見かけたこともあったのだろう、生前、時々口にしていた。
そんなこともあり、宇和島人は司馬遼太郎が好きなのである。そこで、功名が辻がはじまって、夫の脳の活性にも役立つとばかりに毎度観ている。いろいろ訊ねると、夫は、「そうだよ」とか、「どうだったかな」とか、質問をわかった上で応えてくれる。やはり本の記憶があるのだと思う。
私は主だったキャストが気に入っていて面白く観ている。千代、一豊、竹中半兵衛、秀吉、信長などの性格づけと演技が明確なのが観やすくていい。千代の初々しさは今後もひたむきに一豊を支えて生きることを感じさせて感動する。上川隆也さんの純な熱血性、筒井道隆さんの清明さも素敵だ。