第二十一回 開運の馬

今夜はいよいよ伝説の千代の内助の功の巻き!


時は天正8年11月、所は安土城下。
千代(仲間由紀恵)と一豊(上川隆也)は、二人だけでのんびり城下を歩いている。一豊の働きのおかげで、安土城下に家をもらっており、よねは一豊の母が預かってくれている。踊りに興じる人たちの中に入って一緒に踊る千代。苦笑しながら見ている一豊。
安土城下は信長の威光を表わして豊かに賑わい平和である。結婚13年目の幸せをかみしめている二人。
とそこに、「馬市が立つ!」と叫びながら駆けていく人々。とたんに落ち着きがなくなった一豊。ついに、「千代、すまん、馬市に行って馬を見てくる!」と言うが早いか駆けていってしまった。がっかりした表情で見送る千代。


馬市には堀尾吉晴生瀬勝久)や中村一氏(田村淳)、そして秀吉の家臣になったばかりの若き加藤清正たちも来て、馬を熱心に見ている。
ひときわ立派な馬を連れた博労(北村和夫)がやってきた。人の波がどおっとそちらに動く。一豊も茫然とする面持ちになるほどその馬に惹きつけられた。
博労は、「この馬は奥州南部の馬だ。値をつけてみよ。」と周りの人たちを見回して言う。
一豊は、「黄金10両!」と言ってしまう。だが買えるはずはない。山内家は禄高に比して家臣の数が多く経済は火の車だ。一豊の衣服なども貧相で、1300石取りの家の主人の着るものではない。黄金10両で馬を買うなど夢のまた夢である。


その頃、安土城内では信長(舘ひろし)の妻濃(和久井映見)が床に伏していた。信長が来て、「我が寺に詣でてみよ、病など吹き飛ぶ。」と言い、寺は信長自身が奉ってあると言う。表情が曇る濃。「殿は変わられました。神でも仏でもないはず、血も涙も流す人に過ぎないでしょう。」と諌めるように言う。
その濃に、信長は刀を抜き、「これでわしを刺してみよ。天がこのわしを生かせておる。わしは刺されても死なぬ。」と迫る。


さて、千代は吉兵衛(武田鉄矢)たちから馬のことは聞いていた。「龍のような馬だそうでございますね。」と馬のことばかり考えてぼんやりしている一豊に訊く。


同じ安土城下に明智光秀坂東三津五郎)もまた屋敷を持っていた。光秀のもとに城から文が届く。それを読み当惑した表情の光秀。「殿様からでございますか?」と訊くまき(烏丸せつ子)。「いや・・・。」文を握り締める光秀。
城の濃の部屋の廊下。濃が誰かを待つような風情で座っている。そこに光秀が現れる。
「このようなことをなされてはいけません。」と懐から文を取り出す光秀。
「心を開けるのはあなた様のみ。私は人質としても役目は終わり、殿はお変わりになられ、もう私の居場所はどこにもないのです。殿は神になられた。刺されても死なぬ、天がわしを生かせている、と仰せられました。」深い孤独を切々と訴える濃。
「奥方様は安土を離れてはいけませぬ。」と叱責するように言う光秀。
「誰のために?」
「天下のためです。」
「光秀様は、生き直したいと思われませんか?」
「人はやり直しはきかぬものでございます。」
「ただ夢に描くだけでございます。」
「夢に描くのも許されませぬ。時の流れが望まぬものであったとしても。」
濃を突き放すようにそう言い放って去る光秀。迷える子供のような切ない表情の濃。
《この場面はとても深い意味を含んでいる。濃はただ己の忍ぶ思いと孤独に耐えられなかっただけの純粋な言葉であったが、光秀にとっては非情な残酷な決定的な杯を受けさせられた、と言っていいだろう。実際、この後、光秀は、濃の傍らで仮眠をしている信長を刀で刺し、だが信長は死なず、刀より冷たく鋭い視線を光秀に浴びせつつ、「濃はお前にくれてやる」と言う夢を見る。それにしても、濃と光秀の恋は恐ろしく濃密で官能的だ。和久井映見の全てがそれを語っている。このドラマで女優として最も魅惑の役は濃ではないだろうか。三津五郎は、思いを抑えた中から男の色気を滲ませて魅力的だが、五年前だったら尚完璧だったろう。・・・私としては少し頬のこけた三津五郎を望むからだ。この頃の舞台の三津五郎は真実美しかった。現代性がありながら妖しく。》


千代に戻ると、千代もまた馬のことばかり考えている。千代は、一豊に嫁ぐ前、親代わりの不破市之丞(津川雅彦)、きぬ(多岐川裕美)夫婦から黄金10枚を、「いいか、これは生活のために使ってはならぬ。一豊殿の役に立つ時に使うのだよ。」という言葉とともに貰っていた。
千代は、“今こそこのお金を使う時だ”と思った。そして馬で長浜の本宅に戻り10両を持って来る。途中、道端に倒れている品のよい美しい女性を助ける。濃である。だが千代は、この女性が殿様の奥方だとは知らない。
家に連れ帰り、傷の手当をして、「休んでいなされ。」と言う。
一豊が帰ってくると、千代は部屋で10両を差し出す。
一豊は驚きのあまり取り乱して、千代に、「得意そうな顔じゃ、小賢しい、情がこわい女子じゃ。わしに隠しておったのが許せん。」と怒ってしまう。「高みから見下ろしておるのか。」とまで言ってしまう。号泣しながら、「嫁いだ夜に、一国一城の主になりたいと言われたから、夫の夢を自分の夢として、ともに乱世を生きようと決意をしたのでございます。」と訴える千代。千代を抱きしめて、「悪かった。」と謝る一豊。「私を小賢しい、情がこわい女子じゃとおっしゃいました。」とここぞとダダをこねる千代。(あぁあ、甘くて見ちゃいられん、勝手にやってろ! 二人とも可愛いからいいけど・・・)


こうして、一豊は稀なる名馬を自分の分身とする。・・・馬を見つめる上川隆也の表情がきらきらして素敵だった。


千代と一豊がお金をめぐってけんかをしている時、濃が立ち聞きをしていたのだが、濃は、千代が言った、「乱世をともに生きる、支えたい。」の言葉にひどく心を揺り動かされたようだ。濃は千代に礼を言い、元気になって去っていく。


一豊の名馬と千代の噂は信長の耳にも入り、秋が深まったある日、森蘭丸渡辺大)が二人を呼びに来る。
信長は一豊の馬に乗って駆け、「いい馬じゃ。馬ぞろえに出せ。」と褒める。千代にもねぎらいと褒め言葉を出す。感激する二人。(後に馬ぞろえに出し、見事優勝したと言う。)
信長が去った後、一台の輿が来て、中から濃が顔を見せる。そして、千代に袋を与える。袋には砂金がつまっていた。


一豊が、中国攻めに出る日。「あの馬で開運の戦いをしてくる。」一豊は晴れ晴れとした顔で出陣していった。よね6歳。本能寺の変の数ヶ月前のことである。

                               ・・・・・・・・・来週に続く

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今週のお薦め『功名が辻
http://d.hatena.ne.jp/poietes/20060528

私のお気に入り『功名が辻
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