第二十九回 家康恐るべし

いよいよ秀吉(柄本明)と家康(西田敏行)の対立が露になる。
天正11年の賤ヶ岳の戦いを引きずって、織田信長の三人の息子のうち一人生き残っている次男の信雄の動き(家康に援護を求めるなどの)がきっかけで、ついに秀吉と家康が戦うことになったのだ。
この戦は、秀次(成宮)の愚行があって秀吉が負けたのだが、その秀吉に、「徳川殿はかってない名将なり。」と言わしめたほどの家康の鮮やかな読み、決断、行動力が描かれていた。


ここにきての、家康の狸ぶりと非凡ぶり、圧倒的に面白かった。
信雄と二人で秀吉を攻める話し合いをした後、襖を閉め、三人の重臣(本多や石川)に、「信雄はまことのウツケだな。」と言うのだが、この時の表情に、家康の全部がこもっているような存在感とオカシサとコワサがあって、西田敏行って凄いなと思った。そして、ここの、襖を閉めた時、信雄のマヌケ顔のアップを映して、それを襖で締め出すという演出、家康の英雄としての残酷さと信雄の運命を表してよかった。


この回、成人した秀次がはじめて登場したのだが、ここですでに秀吉と秀次の間の不安定さを演出して、今後の興味をそそられた。秀次が心優しい美しい若者だけに悲劇性が増すのだろう。


いずれにしても、今回は、秀吉と家康のかけひき、腹の探りあいが描かれたのだが、二人の大きな両輪ぶりにはモンクがいえないと思った。


さて、我らが千代(仲間由記恵)と一豊(上川隆也)だが、先週の谷底に落ちたかのような落胆から立ち直って、ぐっと精神的に落ち着き、風格さえ漂わしていた。そしてついに、一豊は、自分の命をはって秀次の命ごいをした褒章で、長浜城をもらうのである。
ラストの二人の狂喜乱舞の様は微笑ましく、思わずこちらも「よかった、よかった!」である。