第四十二回 ガラシァの魂

ガラシァ・・・明智光秀の娘と生まれ、それ故に数奇の運命を辿り、マリアへの愛とイエスへの信仰をもってその生き様と死を示した戦国の大輪の花。
長谷川京子が、初々しくこの大役を果たして散った回である。
そしてこのガラシァの悲劇は、千代(仲間由紀恵)にも襲い掛かろうとしていたのである。史実的にはどうか知らないが、石田三成の使者が再度千代を大阪城に来るようにと迎えに来る。これは人質としてだ。
ガラシァはそれを拒み、死んだのである。そうして細川家は家康につくことを決し、戦国を生き延びた、とナレーションは言う。
山内家もまた、千代の生命を賭けた選択を迫られていたのである。
千代を守ろうと苦慮する一豊(上川隆也)。一豊の命を受け、実際に三成側の関所を神主の姿をして千代救出のために通ろうとする康豊(玉木宏)。一豊が三成につくか家康につくかの重大な最後の決断をするに必要な千代の文を持って、危険な中を突破しようとする山内家の中間(好演だったのに名前がわからない。すみません。)。
どの場面も、まさに危機一髪、氷上の綱渡りである。
そしてどれをも助けたのが、このドラマの隠れたるもう一人の主役、六平太(香川照之)である。
六平太なくしては山内家は滅びの道に入ったであろうという活躍ぶりであった。
六平太さん、ありがとう! である。


こうした暗躍の中、一豊は、山内家の存亡を賭けた決断を迫られる緊迫の時刻を迎えていた。
こういう重い重圧感に耐える上川隆也の表情は美しい。
ラスト、ついに家康につくと決した瞬間の、一点の出口をやっと見つけた人の目の変化もまた美しい。
一豊は他の人物の引き立て役のように見えたこのドラマの主役は「我なり」を示した回となった。
実際はもっとドロドロとしたものであったろうが、このドラマはこうなのだ。


今後、義に生きようとして全てが虚しい坂道を下ってゆく無念を生きる石田三成中村橋之助)が主役となる回はこれからだろう。それは楽しみの一つである。
三成が背負った悲劇は、現代にも深く通じているからだ。